Twilightの向こう側

The Girl Who Inherited Both Light and Darkness

最終決戦

夜の廃ビル──その最上階に、紫がかった闇が渦を巻いていた。
その中心で、天城 希闇の身体がゆっくりと浮かび上がる。
彼女の瞳は光を失い、ただ深い闇に染まっていた。
「君は、私の──最高傑作だよ」
その声の主は──闇の王、オール・フォー・ワン。彼女の“父親”。
(僕は……何のために、生まれた?)
正義か、悪か。どちらにも染まれない自分の存在に、意識が沈んでいく。
──そのときだった。
希闇!」
風を裂く羽音。赤い翼を広げて、ひとりの男が駆けつける。
ホークス。かつて“闇”に飲まれた彼女を救った、唯一の存在。
「君は……俺の知ってる“君”だろ!!!!!」
彼の声が、心の底に届いた。
「……どうして、そんなふうに……」
声が震える。世界は灰色で、自分は何者でもないと思っていた。けれど、彼だけは、ちゃんと見てくれていた。
「君は“光”でも“闇”でもない。
天城 希闇”っていう、たったひとりのヒーローだ」
その言葉が、すべての鎖を断ち切る。
闇の因子が悲鳴を上げる中──
“Twilight”──その名の通り、光と闇の境界に立つ存在が、目を覚ました。

エピローグ

全てが終わった。希闇は静かな屋上でひとり空を眺めていた。
空は茜に染まり、風がやさしく吹き抜ける。
そう、全てが終わったのだ。自分を縛っていたものが。
僕はこれからどう生きていこう。
すると、ふわりと音もなく舞い降りてきた赤い影。
「……いつか君と、ヒーローが暇を持て余すような世の中を一緒に……」
その言葉に、希闇はふっと目を細めた。けれど何も言わず、ただ夕暮れの空に目を向ける。
ふたりの影が、静かに重なった。
Twilight──それは、光と闇のあいだに咲く、たったひとつの名前。

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